2024年7月24日、モンブラン登頂に成功!
夫と彼の同僚二人にガイドさん2人に付き添ってもらっての登頂。頂上に着いた時には、疲れと達成感とで、嗚咽をあげて泣きじゃくってしまった。
と書いても、読者の多くは、「モンブランってケーキの?」というのが普通だし、「高い山なのはわかるけど、そんなに大変なの?」と思うだろう。
何を隠そう、私も2年前、夫が登ろうと言い出す前はそうだったのだから。
モンブランは、イタリアとフランスの国境に位置する4810mのアルプスの山。富士山が3775mなので、だいぶ高いのはわかってもらえるだろう。
それでも、富士山に登ったくらいの経験しかなかった2年前の私には、1000m高くなることがどれくらい大変になるかという実感が湧かなかった。
そして、去年の夏、シャモニーでモンブランに挑戦する前に必要とされる研修の一つを受けたのだが、そこで
4度目の出産
と比喩するに至る経験をする。そもそも、モンブラン登頂は夫のアイデアで、この2年は、私は仕事で新しい挑戦をしていたので、この時点で諦めることを検討(笑)
それでも、尊敬する先生の「やるなら今。このあとは、どんどん実現の可能性が減る」という言葉に後押ししてもらったこと、子供達が大きくなってきて、夫婦で共通の趣味を持つのも大事かなと思ったこともあって、私の給料約1ヶ月分のお金を支払ってガイドを申し込んだのが、2023年10月。
その後、モンブランに向けて本格的にトレーニングを開始!
と言いたいところだが、実際は、そうでもない。
今回ご一緒した夫の会社の登山のスペシャリストに日本の冬山にいくつか(荒島岳ー福井県、唐沢岳ー長野県、富士山ー山梨県)連れて行ってもらった以外は、自分で高尾山(東京都)と大山(神奈川県)で行ったくらい。あとは、ランニングを 6ー8km を週3回くらい。
単身赴任で時間がたっぷりある夫は、毎日のようにスポーツクラブやら自転車通勤やらでトレーニングに精を出していたけど、普段ワンオペの私が捻り出せるだけ出した時間でできたことはそのくらい。
ご一緒した夫の同僚は、天気が許せば、毎週のように登山をしていらしたというので、私のトレーニング不足が何よりもの不安だった。
というのは、ガイド1人につき、登山者は2人が義務化されていて、登山者のうち、1人が諦めたらその時点でもう1人も諦めざるを得ないからだ。もちろん、一組が脱落してももう一組は挑戦し続けられるのだけれど、夫の同僚の方々の通訳の役目もあったので、私と夫だけが諦めればいいというわけでもなかったのだ。
モンブランには3日間かけて、登って降りてくるのだけど、いきなりそれに挑戦させてもらえるわけではない。モンブランに挑戦する4、5日前に、泊まりで別の山で実力を測られる。すでに、ヘロヘロの私。
ガイドさんに「できないとは言わないけど、この2倍の辛さだから。辞めるなら今。行くと決めても、頂上まで行けるものだと簡単に思わないで」と釘を刺される。
最後まで行けた秘訣
そんな明らかに実力不足の私。それでも最後まで行けたのはなんでかなと考えてみた。
一つは、歩き方。
下を見ない、上を見ない。ひたすら足元を見て、歩を進める。
下を見れば、もし、足を滑らせたらと恐怖に襲われるし、上を見れば、あんなところまでとても行けないと気持ちが折れそうになるからだ。
3人ずつ命綱で繋がれているので、上下を見ている余裕がないというのもあるのだけど、とにかく、ひたすら前をゆくガイドさんと夫のリズムに合わせて足を送り出すだけ。
ガイドさんには、どうしてもきつかったらペースを落とすから、とにかく止まらないで歩き続けてと。
私たちらしい結婚20周年記念
歩きながら、ふと、私たちらしいな、とふっと笑いが込み上げてきた。
式なし、婚約指輪も結婚指輪もなしで結婚して、今年20周年を迎えた私たち夫婦。そのいい記念になるなぁと。
変わっているかもしれないけど、「みんなに祝福されて」とかウェデングドレスとか全く興味がなかった私。
「この人となら、一生、新しいことに挑戦して楽しめそう」と思って選んだ夫。
20年後にまだ仲良く一緒にいたら、それこそ、式をあげてお祝いするに値するのでは?と考えていた。
その20年後、夫婦でモンブラン登山に挑戦しているって、悪くないなと。
夫はどう考えているか、わからないけど。
モンブラン登頂で確信した新たな目標
そんなこんなでモンブラン登頂してよかったこと二つ。
一つ目は、
自分の底力を知ったこと
どう考えても実力以上の結果だったと思うけど、それでも、私の中にこれだけの力が眠っているんだ!って確信を持てた。
これができるなら、人生折り返し地点、このあと、もっともっといろんなことができるに違いないとワクワクしている。
もう一つは、
私が他の人より秀でているところでガイドになろう!
という夢というかはっきりとした目標が持てたこと。
それは、ここ2年くらいずっとモヤモヤと私の中にあったことだけど、それがはっきりと目標に変わった。
なぜかというと、上に書いたように色々気持ちの面で、頑張る理由はあったにせよ、最終的に
私の底力を引き出し、登頂に導いたのはガイドさん
だからだ。たとえば、
大きい目標に向けて小さい目標を設定してくれたこと
いきなり頂上を目指したわけではない。
「次の目標はテット ド ルース小屋。ここは、標高に慣れることが目的。息を深く吸い込みながら歩いて止まらないで」
「次は、グーテ小屋まで。かなりの岩場、すぐ暑くなるから着込まないで。そこで温かいものを飲んでから次を目指す」
と、気が遠くなるほどの道すじを小分けにして、大事な要点だけをアドバイスしてくれる。
基本的には、タイムアウトにならない限りは、私たちクライアントが諦めるというところまでは付き合うという姿勢の彼。
登頂を決めるのも諦めるのも自分!と、頑張れとも言わないし、辞めろとも言わない。
それでも、最後あと80mの標高差(歩いて80mでない!!)というところで、
「香織!君は、頂上に立つに値する、GANBA!」
と言ってくれた。このここぞというときの一言にどれだけ励まされたことか。
それで思ったのだ。ガイドになろうと。
先に歩いたからこそわかる歩きやすい道、躓きやすいところ。
歩き方のコツ。
目標設定の仕方。
励まし方。
別の言い方をすれば、コーチングということになるのかもしれないけど。
教師という私の仕事の中で、子供たちや親、同僚にとってそういう存在になれるように、また明日から一歩を踏み出したい。
この記事は、下山した翌日に書いているのだけれど、こんな風に登頂の余韻を噛み締めている横で、
「来年の挑戦は何にする?」と何度も聞いてくる夫(笑)
夫「登山はもうやめよっか、膝が心配だし」
私「えー。せっかく道具も揃えて、楽しくなり出したところなのに?!」
夫「メルカリで売ればいいよ。君、得意じゃん!」
私「・・・」
さてさて、結婚30周年記念を祝えるか?!