学校現場ではよく
「魔の11月」
と言って、11月にはいろいろな問題が起こりやすいことを表現する。私の尊敬する先輩先生は、「4月から学校が始まり、半年以上が過ぎると、いろいろな歪みや緩みがこの頃に表面化する」と教えてくれた。
今、インターナショナルスクールで働いていて、9月学校始まりだけども、やっぱり11月は何かと自分の気持ちも落ち込むし、学校でも軋轢が起きやすい時期なので、「日照時間が減って、教師にも子供にも体に影響を与えるのかな」と勝手に思っている。
そんな11月、私がいっぺんで元気になることが昨日3つも起きたので、言語化して、この月を今年も何とか乗り越えたい。
学校で強制されなくても、漢字の勉強を再開した子
「先生!」と中学校の校舎を通ったときに声をかけられた。2年前にイマージョンクラスで教えていた教え子だった。
卒業してしまえば、ろくに挨拶をもしてくれない子もいても仕方ないと思うけれど、こんな風に遠くからも、声をかけてくれるのは、まず嬉しい。お母さんから、その子は学校で日本語の授業をとるのを今年辞めてしまったというのを聞いていた子だ。
「元気?」と声をかけると、
「はい!僕、自分でまた漢字の勉強始めました。ほら、やっぱりちょっと離れるとどんどん弱くなっちゃうから」
と話してくれた。
「さすがだね」と言うと、「まあね、僕だから」と、ちょっと照れながら、胸をポンと叩いて言った。
クラスを離れてしまうと、私はもう見てあげることはできない。
学校の授業から離れてしまうと、なかなか自分で勉強のモチベーションがわかないのもよく知っている。
その中で、彼は自分で必要性を感じて、自分なりの勉強の仕方を見出して、勉強を再開したと聞いて、本当に嬉しかった。
2つの言語を頑張る子
その後、また別の教え子とすれ違った。去年教えていた子だった。フランス語を補強するために、今年は日本語のイマージョンクラスから一度外れている子だった。
それが決まった時は、「もう学校に行きたくない。どうして?」と涙ながらに訴えられて困ってしまったのを覚えている。
その子が、「また、元の(イマージョン)クラスに戻れるかもしれない。フランス語すごく頑張ってるから。次は、日本語のクラスに追いつけるようにキャッチアップしないと」と満面の笑顔で話しかけてくれた。
1度は自分の思いが叶わないクラスになっても、諦めずに自分のルーツと関わる2つの言語を頑張っている姿が眩しかった。
宿題でなくても頑張る子
その日は放課後、漢字クラブもあった。
勤務校の放課後学童みたいなもので、「習い事」として漢字クラブに参加してくれてる子供たち。
クラブだけで漢字の勉強してももちろんなかなか定着まではいかない。
それでも楽し見ながら、漢字の原理原則を体得してもらうことで、漢字を学ぶコツをつかんで欲しいと思ってやっているクラブだ。
なので、宿題としては出さないけれども、家庭学習につなげられるように任意の課題は出している。
やってきたら、スタンプをもらえて、それを集めると、くじが引けるという仕組みにしている。
それで、1年生の子が課題の半分をやってきた。1年生から3年生の子がいるので、その子にとっては半分やるのが精一杯だったのだろう。
半分ではスタンプがもらえないとわかると半べそになってしまった。それでも、半分やってきたことをいっぱい褒めて、もう半分頑張って家でやってきて、来週一番に見てあげると告げた。
すると、その子のお母さんからその早速やっていたと教えてもらった。
「サッカー以外で、この子がこんなに自分から積極的に頑張る姿を見れたのは初めて」という言葉に、文字通り元気をもらった。
やればできると信じて、いろいろな障壁があっても、めげずに頑張る。子供たちのたくましい姿に元気をもらう。
教師の仕事って何か教えることより、こんな風にやる気スイッチを入れてあげて、定期的に励ましてあげることだよな、と思う。
そして、私自身も、その姿に励まされている。11月も半分過ぎた。
私も誰かの魔の11月を助ける存在でありたい。