昨日、私が勤務する在日フランス系インターナショナルスクールの卒業生の話を聞く機会に恵まれた。色々感じることがあったので、またゆっくり内省して追々記事にしたいと思う。でも、一つ、漢字の話が出たので、簡単にシェアしたいと思う。
その方は、日本で生まれ育ち、幼稚園からずっとこの在日フランス系インターナショナルスクールに通って、大学でフランスの語学大学に入り、日本語を学び直し始めて、愕然としたこととして
漢字は読めて漫画や新聞を楽しんでいたけど、書く力は小学校3年生レベルだった
ことを挙げていた。在日フランス系インターナショナルスクールにいる時には、そのことにすら気づいていなかったというのが印象的な話だった。その後、焦って猛勉強をして一年で全ての常用漢字は書けるようになったというので、とても素晴らしいなとも思った。
さて、皆さんはこれを聞いてどう思うだろうか?
そもそも、海外やインターナショナルスクールでバイリンガルに育つ子ども達に漢字って必要か?と疑問に思っている方もいると思うので、そのことについて、私の考えを書きたい。
もし、日本語は
「一時帰国の時にじじばばと日常会話ができればいい」
と目標設定をしているのであれば、基本的には要らない。
いやいや、
日本の学校に一時帰国中に体験入学させたい、
日本語でニュースがわかるくらいにはなってほしい、
将来、日本の役所で手続きくらいは自分でできてほしい
などと考えているのであれば、やはり漢字の学習は避けて通れないと思う。その理由として、私は大きく二つあると考えている。
将来、コンプレックスを感じてしまう
一つ目は、漢字ができないことで、バイリンガルの子どもが
将来、コンプレックスを感じてしまうこと
だ。
シカゴに住んでいた頃、日本領事館でパスポートの書き換えに来ている20代の女の子と出会ったことがある。パスポートを受け取りに来ていたんだけど、
「最後に間違いがないか確認してください」
と係の人に言われて、
「漢字が読めないので確認できません」
と、とても恐縮した様子で答えていた。
「漢字ができなくても日常会話ができれば良い」と考えていても、日本国籍を維持しようと思えば、こんなふうに日本語で漢字を理解して手続きをすることは、少なからず将来的にあるだろう。そんな時、漢字が読めないと、やっぱりハンディだと私は思う。
ダブルの子どもたちが辛いのは、完全な「外国人」と違って、
日本国籍を持っている
というだけで、あるいは、日本人の顔をしているだけで、
日本語ができる、読み書きできることが普通だ
と思われてしまうことだ。もちろん、表立ってそう言われることは少ないけれど、ダブルの子どもたちは暗黙にそれを感じ取り、できないことを恥ずかしいと感じていることが多いものだ。
冒頭で触れた卒業生の方も、自分が漢字ができなくてもいいと思っていても、周囲が自分をどう見ているかで、不安定な気持ちになるという話をしていた。(それは漢字に限らず、暗黙に要求される行動も含めてだけど…)
漢字力がないと日本語習得が頭打ちに!
二つ目の理由は、タイトルの通り、
漢字力がないと日本語習得が頭打ちに
なってしまうからだ。
漢字をやらないと決めて、日本語の「聞く・話す」に時間やエネルギーを費やすという決断もあり得るとは思う。ただ、漢字をやらないとどうしても
話す言葉が幼稚な響きを持ってしまう。
理由は簡単で、漢字の知識がないと「漢語」が身につきにくいので、一般の大人が話すような漢語を使った会話ができないからだ。話し方だけでなく、当然ニュースなども漢語のオンパレードなので、聞き取るのも難しくなる。
また、デメリットの一つとして、
語彙が増えにくい
ということも挙げておく。
昔、盲学校で教えていたことがあるが、その時4年生の子が「右折」の言葉の意味がわからず驚いたのを覚えている。確かに「ウセツ」と読めば(点字を使っている子はそうなる)、私たちも一瞬わからない。でも、漢字を知っていれば、字を見れば「右に折れる」と意味を推測することは容易だ。
それに加えて、右に折れるのが「右折」なら、左に折れるのは…左折?◯セツ…。左の音読み?…と考えることができ、応用が利くので、語彙は雪だるま式に増やせる。この知識がない子は、一つ一つ個別に語彙を増やしていかなければならない。
ということで、「読み書きができる」「高度なレベルの日本語習得を目指す」のであれば、やはり漢字は避けて通れないというスタンスで、自分の子育ても勤務校での指導も行っている。
もちろん、人によっては特にハンディを感じないかもしれないし、さまざまな道具が発展している現代では、昔ほど漢字を覚える必要はなくなっているのかもしれない。でも、少なくとも、
漢字の仕組み、漢熟語の仕組みを理解しておくこと
は、どんな道具が便利になったとしても、持っておきたい漢字力だと思う。
漢字の仕組みを楽しく学ぶノウハウ
ここまで読み進んでくださり、
じゃあ!どうすればいいの?
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