シーンと静まりかえる教室に、1人の女の子がルビなしで漢字リズム音読を唱える声が響く。やや緊張している。他の子どもたちは、固唾を飲んでそれを見守っているが、やがて体がリズムに乗って動き出す。読み終わった途端、みんなが弾けるように拍手喝采で立ち上がる。(ビデオがあるのだけれども、まだ承諾を得ていないのでここでは見せられないのが残念)
これは、今週、放課後アクティビティーとして学校のそばの自治会で開始した「漢字クラブ」の1場面。
年長さんから小学校4年生までが約20名集まった。日仏英と3つの言語を学ぶマルチリンガルの子どもたち。日本語にかける思いやレベルもまちまちである。そんなサラダボールのような色とりどりの子どもたちが集まるクラス。そのクラス開きの内容。迷って迷って、選んだのは
漢字リズム音読の行事編「お月見」
著者の小野ふじ子さんに直々にお願いして作っていただいたものだ。
前日、文字通り夜眠れない位、私は緊張していた。理由は2つ。
- リズム音読の素晴らしさをうまく子供たちに伝えられるか。私のせいで、はじめにつまずいてしまい、この斬新な手法に背を向けられたらどうしよう。
- 学校ではなくクラブ。面白くなければ子どもたちが来てくれない。その最初の1回はとても大事。うまくいくか…
結果は…大成功だったと思う。
冒頭のようにクラスの集中力の高まりはビンビン感じてきたし、「宿題ではないけど、家でもやってみてね」と渡したリズム音読。家に帰ってから、自ら音読していますというおうちの方からのメッセージがバンバン入ってきた!
やっぱり、漢字リズム音読は偉大なり!!!
ということで、これまでも、リズム音読についての記事は書いてきたし、今年の4月から7月にかけては使い方に関するセミナーも行った。でも、改めて今回のことで発見したこと、まだ足踏みしてる人にオススメしたい事があるのでいくつかポイントを整理したい。
目次
はじめの1歩に「行事編」がいい!
小野ふじ子さんがはじめに出された著書
これは、全てが網羅されていて、素晴らしいのだけども、正直、買った時はどこから手をつけていいか、途方にくれた。マルチリンガル漢字指導研究会の定例会で、著者自身に解説していただいて、急に食指が動き始め、最後には、これをもっと世に伝えねば!とセミナーを開くことになったんだけども。
- 漢字リズム音読って何?
- どこから始めたら良い?
- はじめの1歩がなかなか出ない
という方に、今回紹介する行事編はとっても良い。試しに、単発で使ってもらえれば、漢字リズム音読の良さがわかってもらえるはず。ノリノリで音読してるうちに、漢字のみならず、海外在住の親御さんが期待する「日本の文化の習得」を自然にできてしまうから。
年齢差、レベル差があってもへっちゃら
多くの指導者(保護者)が悩むのは、クラスの中(兄弟間)のレベル差。でも、このリズム音読はそれをゆうゆう乗り越える。
イラスト付きで内容が濃い。
内容的には、理科や社会などの教科的な内容も入っていて難しいし、語彙のレベルも高いけれど、イラストがあるので、小さい子もなんとなく意味がわかるのか集中して聞いている。もちろん大きい子にとっては、知的好奇心を充分満たしてくれるので、食い入るように見ている。
そして、スモールステップを踏めること。
一通り、内容と読みを確認した後には、「ルビの有無」「速さ」で、難易度を変えてスモールステップを踏めるのもこの教材のいいところ。クラスでは、小さい子はルビありに、大きい子はルビなしに挑戦したり、もっとできる子は速さに挑戦したりした。そうすると、それぞれが自分のレベルに応じた課題に挑戦し、みんなの前で披露、拍手をもらえて、達成感、自信につながる。大きい子は小さい子が頑張る姿に、負けていられないと気が引き締まるし、小さい子は、大きい子をロールモデルにできる。これは、大人数ならでは、マルチエイジクラスならではの醍醐味でもある。
やっぱり、誰もが落ち着く4拍子。
そして、何といっても、4拍子。子どもが自然に体を揺らして音読し始める!普段、音読の宿題を嫌がる子どもも、宿題と言わなくても、口ずさむ。
というわけで、これからも行事編を追加販売してくれるように小野ふじ子さんにリクエストしたので、乞うご期待!
今回の授業で使った「お月見編」。
それから、すでに終了してしまったけれど、動画を引き続き販売している「子どもがノリノリ!奇跡の漢字リズム音読法セミナー」。
興味がある方はぜひリンク先に飛んでください!
クラブの次の日、一緒に参加している末っ子から言われたこと。
「ママ、ありがとう、漢字クラブを作ってくれて。ほんとに楽しかった!」
私にとって、これに勝るご褒美はない!!ここまで来れたのは、マルチリンガル漢字指導法研究会のみんなのおかげ。これからもみんなと知恵を出し合いたい。ここまで来るのに、足掛け3年かかっているので、世界の同志がもっと早くここに辿り着けるような、セミナーや教材開発も頑張りたい!