7月、マルチリンガル漢字指導法研究会の定例会で、私のフレンチスクールの1年間の漢字指導について発表をさせてもらった。この研究会での学びを120%生かして行ってきた実践。そしてその報告。学校現場の指導者として、「子供たちは楽しんで漢字学習に取り組みました」というのではいけないので、成果をなんらかの形で見せないといけない。まずは、子供たちの日々の反応や発言を紹介して、漢字の原理原則、その学年の漢字や語彙力を習得できたと判断したと話した。ただ、子供たちを直接見る事が出来ない皆さんにはある程度の数字的裏付けも必要と考えて、学年末に行った該当学年の漢字検定過去問の結果についてもお伝えした。
受け持った2クラスとも、3分の2の生徒が初回で80%以上の点数(漢検の合格ライン)を取れた。
という結果は、思いのほか、説得力があったみたいで、多くのメンバーが驚きの声を上げてくれた。会の後、メンバーの何人かから、「もっとこの結果を前面に出せばいいのに!」というお声すらいただいた。
でも、あんまり漢検の結果を前面に出す気がしなかった。なんでかなぁと考えた。
この漢検の結果が本当に素晴らしい?!
正直に言うと、年の終わりに、子供たちに漢検の過去問を受けさせることには少々抵抗があった。何故かと言うと、文科省も学年配当漢字について、読みは、その学年中に習得を目指すが、書きについては、次の年で良いとしているので、読みも、書きも要求する漢検は、日本人100%の子供にとってもやや高い目標のテストとなるからである。あまりにできなくて、子供たちをがっかりさせたくないという気持ちもあったので、子供たちにはテストの前に「半分ちょっと取れれば、充分合格だから」と言い聞かせて受けさせた位である。
その結果、3分の2の子達(しかも、漢検ははじめての子たちばかり)がいきなり合格点を出したので、私も正直びっくりした。こんなものだったかな?私が漢検を難しく考えすぎていたか?と定例会で発表した時には、自信がなかった。それで、そんなに前面に出して自慢しなかった。でも、メンバーの「これは快挙だ」という反応に、「やっぱりそうだよね。すごいよね。」私自身も指導法に間違いはなかったと、自信を深めることができた。
その後、小四になる娘に漢検8級(小3レベル)の過去問をやらせてみたら、やはり半分ちょいしかいかなかったので、このクラスの学びはすごく有効だったんだと再確認することができた。
だからもっと自慢しても良いのかもしれないけど、それでもやっぱり漢検の結果を表に出す時は用心しなくてはと思う。
合格点に達しなかった子供たちの存在
何故かと言うと、それを前面に出しすぎると、合格点に達しなかった3分の1の子供たちが、なんだか悪いような気になってしまうから。でも、この残りの3分の1の子供たちが最もこの1年で伸びた子たちでもあるのである。私が「頑張ったね」と言ってあげたい、自慢したい子供たちなのである。この子たちはこの子たちのペースでしっかり伸びたのだから、他の人にはわからないかもしれないけれど、教師である私はしっかり評価してあげたい。
クラス全体の漢検の結果だけを伸ばそうと考えたら、この子たちをもっと違う風に叱咤激励しなくてはいけない。けれど、この子たちのペースを乱したくないし、数字ばかりにこだわって、大切なものを見逃したくない。
漢検の過去問の後に伸びた子供たち
それでも、漢検をやって良かったなぁと思う。なぜなら、この残りの3分の1の子供たちが、このテストの後に漢字学習(復習)に熱が出て、追い込み学習でメキメキと力を付けたからである。何がよかったのかなと考えたら、理由は二つあった。
一つには、漢検は、「読み」「書き」「書き順」「部首」「音訓読み」など項目ごとに問題が分かれているので、自分が苦手な分野というのがはっきりしたことが大きい。道村式カードを紹介して、苦手なところを克服する方法、スモールステップできるように表を作ってあげたら、コツコツとやり始め、最後は、ほぼ合格点というところまで、たどり着いたのである。
もう一つは、きちんと点数化されることで、目標が具体的になったこと。過去問を何回分かやるうちに点数が少しずつ上がるのがわかるので、やる気に火がついたようだ。また、これはこちらの目的ではないけれども、他の子と比べたりして、競争心からやる気に火がついた子もいる。
というわけで、指導の成果を図るために、これからも漢検とはうまく付き合っていきたいなと思う。