by kaori horike
末っ子の娘が、去年の9月から日本の学校に転入した。その前は、東京国際フランス学園のアメリカンセクションでフランス語と英語を学んでいた娘だ。表題の通り、入ってすぐに行われた50問漢字テストではなんと2点だった。それが、12月末には、94点となった。今日はその娘の飛躍的な伸びの秘訣は何だったのか考えて書き残しておきたいと思う。
娘の経歴について書いておくと、日本で生まれてすぐフランスに移住。3歳からアメリカで3年間を過ごす。4年前に日本に戻ってきたが、東京国際フランス学園に入り、どの国でもフランスの教育システムの中でいた。日本語は、東京国際フランス学園での週1.5時間の日本語授業があるものの、基本は私が教えていた。
学年相当の学習についていけるようにいつも配慮してはいたけれども、この4月からは、9月から日本の学校に転入させると決めていたので、日本語よりもフランス語の方に時間を割いて、4年生の漢字については、他の記事で紹介している「リズム音読」で4−5月に読みだけをさらっとやっただけだった。なので、9月に入ってすぐの50問書きテストでは当然点数は取れなかったのである。
本人も私も「入れてないものは出てこないよね!」と2点のテストの時は笑い飛ばしていた。「どっかでキャッチアップしないとなぁ」と思いつつ、9月からは私も学校の仕事が忙しいので、延ばし延ばしになってしまっていた。それが10月半ばに、娘から「あさって50問テストがあるらしい」と聞いて、にわかに勉強を親子で頑張った。
といっても、2日で4年生の約半分の漢字を復習する事は到底不可能だ。なので、
彼女が知っている漢字、つまり読める漢字に集中して書き取りをさせること
にした。全く知らない漢字を読みも書きも一気にあるのは難しいというのが私の持論だから。
そして、出た結果が22点。
正直もう少し取れると思っていたので、何が問題なの?とテストをよく見てみた。
下の写真を見て欲しい。赤で丸をつけたのは学校の先生。ピンクで丸をつけたのは私。
赤の丸の数は11個。ピンクの丸の数は21個である。
赤は正真正銘彼女がテストで答えられて丸をもらったものなのだけれども、ピンクの丸は、前日私と勉強して、漢字そのものは書けたはずのものだ。
つまり、漢字自体は書けるのだけれども、熟語として出てきたときに、その漢字を思い出すことができなかった漢字なのである。
一つ一つの漢字がわかっていても、熟語とセットで覚えないと、使えない。
改めてそのことを突きつけられたテスト結果だったのである。
にわか勉強だったとは言え、本人もとてもがっかりしていたので、ピンクの丸のところはゆっくり考えればできたはずだよと伝え、一緒に間違い直しをした。結局、21問中、ゆっくり考えたり、別に使われている熟語を示してあげたら、15個は書けた!
その後、これからの漢字の勉強は漢字の一つ一つ覚えていてもあまり意味がなくて、熟語とセットで覚えなくてはいけないこと、そのためには、普段新しい漢字を習うたびに、丁寧に熟語探しをしたり、知らない言葉で文を作ったりすることがとても大事なことを伝えた。
そうして迎えた12月の漢字テストで、94点を獲得したのだ。
では、何がこんなに点数アップに導いたのか。
何も特別な事はしていない。単純に
宿題に対する姿勢を変えただけ
こなすだけの宿題、すなわち漢字一字一字を機械的に練習するのではなくて、漢字を通して熟語を学ぶのだと意識を置き換えさせたことである。
学校からは、毎回2、3個の新出漢字を習い、家でノートに「熟語集め」と「短文作り」の宿題が出される。そのやり方が次のように変わったのだ。
▶️熟語探し
漢字ドリルの熟語をそのまま移す。
→時間があれば、道村式eブックで探して、写真にヒントを得ながら熟語の意味を理解しながら写す。時間がなければ、漢字ドリルのをそのまま写すが、意味がわからなければ、辞書を使うが、私に聞く。
▶️短文作り ドリルの中から知ってる熟語で適当に文を作る。
→できるだけ自分が初めて知ったことがで文を作ってみる。あるいは、1つの文の中に、音読みと訓読みの熟語を必ず入れる。
漢字力を鍛えるには、このようにコツコツ勉強する事は必要だけれども、ただがむしゃらにやっていても、形だけやっていても、あんまり効果は無いのだ。
とは言え、この習得のスピードは驚異的である。驚異的とは感覚的なもものなのでしかないのだけども、ちょうど同年代の子供たちをたくさん教えている教師の感覚からそう言える。その秘密は何かと言うと、やっぱり、
漢字の原理原則をしっかり身に付けていること。
原理原則は何かと言えば、
・漢字には音読みと訓読みがあるということ。
・音が同じ漢字の場合、意味を訓読みを手がかりに考えて当てはめないといけないということ。
・漢字は基本漢字や部品や部首を組み合わせてできていて、その分解構成が素早くできること。
・そして、その基本漢字や部品を正しくさっと書けること。
これこそ、私が漢字クラブを通して娘に身に付けさせたことで、今も他の子供達とやっていること。
彼女が1、2年生の頃、遊びを通して、漢字クラブでつけさせた「骨太の漢字力」なのだと思う。
教師としてもぼんやり宿題の添削やテストの丸つけをしていると何も見えてこないし、アドバイスもできない。だけれども、同じようにやってる宿題でもこれだけ質が違うのである。丁寧に、子供の宿題や漢字テストの結果(点数だけではなく、どこにつまずいているのか)を見取り、普段の宿題の質を上げる働きかけを子供たちにしていかなくちゃいけないと改めて思った。
こう書いてみると、当たり前のことで、マルチリンガル漢字指導法研究会を始める前にもわかっていたことのような気がするのだけれども、たくさんの子供を教えて、自分の子供を間近で見て、初めて心底腹落ちした気がする。