ズバリ!
「音訓読みを小学校1年生の時から導入した方が良いか」
という「先生」のお悩みについて今日は書きたいと思います。
1年生から音訓読み導入は早い?
先日の私がファシリテータを務める「マルチリンガル漢字指導法研究会」で海外補習校で教えるメンバーから
「音訓を小一から導入したら、保護者から難しすぎると苦情が出た」
というお話をいただいたからだ。
一般的に、音訓読みを同時に教え始めるのは、小学校3年生である。なので、それまでは、基本的に1つの漢字に1つの読み方を子供たちは覚えていく。とはいえ、日本で生活していれば、何らかの形で、多くの子供たちは、漢字にはいくつかの読み方があることに早いうちに気づいているものである。しかし、私たちが対象にしているような海外で育つ子供たちは気づかないことが多い。それで、小学校3年生で学年配当漢字が2年生の160個から200個に増えた上に、1つの漢字にいくつもの読み方があることで、それを覚えないととなると、途方に暮れてしまう。「9歳の壁」と言われるような、学習の躓きが生まれる一つの要因はこの漢字の指導法にもあると思う。
冒頭で挙げた補習校の先生が、「転ばぬ先の杖」と、1年生を受け持ったときに、先を見据えて、音訓両方を始めたわけはここにある。ところがどっこい!子供をサポートする、親の方がびっくりしたという状況のようだ。
三つの対処法アイデア
私もいくつかのクラスを持っていて、同じようなクラスがあるので、彼女の抱えているジレンマがとてもよくわかる。
対処法としては、以下の3つが挙げられると思う。
①子供に納得してもらう
いきなり、漢字には「音訓読みがあるので両方覚えましょう」と言っても、子供にはさっぱりわからない。特に音読みは中国語からの読み方なので、抽象的な言葉に使われることも多く、1、2年生の子供には、やはりなじみがないことが多いからだ。なので、
「どうして音訓読みがあるのか、その2つ覚える必要があるのか」
を子供に納得してもらう必要があると思う。私はそのために、簡単な紙芝居式のスライドを用意して、面白おかしく話しす機会を学年の初めにもつようにしている。これをやると、子供たちは大いに納得して、「だから音読みはカタカナで書くのか!外国から来た言葉だもんね」などと言うようになる。
②訓読みの習得は目指さない。
だからといって全部覚えさせようと思うと、やはり子供にとってはハードルが高い。それよりも、1、2年生の配当漢字は、その後も漢字の1部となるような「基本漢字」の扱いが多いので、その形をきちんと覚えて書けるようになることにフォーカスする方が優先だ。なので、写真など視覚教材を上手に使いながら、「この漢字、こんな言葉にも使うよね〜」位な扱いにして、テスト等で習得具合を測ったりはしない方がいいと考えている。あくまでも、3年生の時に向けて、
布石を打つ
くらいなところで留めておく。
③できる子、やりたい子はボーナス点で対応
それでも、中には、音訓読みの両方を同時に習得していくことができる子、やりたがる子もいるだろう。ただそういう子を基準にしてしまうと、アップアップしている子は、最初から漢字学習から離脱しかねない。そこで、上位層の子供、モチベーションの高い子たちも大切にする方法として、
テストでのボーナス点方式
を提案したい。
テストは、主に教科書で示されたものだけを出す。でも、テストの時間を切り、その時間内に、できるだけたくさんの読み方の漢字熟語を書いた子には、ボーナス点をあげるという風にするのだ。こうすると、どの子にも過度な負担なく、でも同時にやる気をキープさせることができる
レベルの高い悩み
今回の悩みは、何も考えずに、決められたことだけをやってる人にはない悩みだと思う。
学年を跨いで見通しが持って指導しようとしている教員だからこそ持つ、レベルの高い悩みだ。 保護者や周囲の先生に、意図するところをきちんと話して、押したり引いたりしながら、頑張って欲しいな。そして、こういう悩みをシェアできる研究会運営を私も頑張りたいと強く思う。
こんな研究会に興味がある方はこちらから→ マルチリンガル漢字指導法研究会https://www.learnjapanonline.com/multilingual-kanji/