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2023年11月1日 by kaori horike

ブックレビュー Les Kanjis dans la tête(頭の中の漢字)

  中国人と同じスタートラインに立つという発想の漢字参考書

です。

前にフランス人のママ友から、この参考書の事は聞いていたんだけども、その時にはピンとこなくてそのままにしてあった。だけど、この夏、「第4言語として日本語の学ぶパターン」の話が昔の教え子との間に出て、ふとこの本が役に立つのかなと思って買ってみた。この教え子は日仏で、奥さんは韓国の方。現在、イギリスに在住しているので、子供は、英語、フランス語、韓国語を学んでいる。日本語は文字までは難しいと思ってるみたいだけども、文化を中心に継承している。

本の特徴

一言で言うと、

  漢字の書きと意味に特化した本

はじめのところで著者も言っているけれども、この本では、漢字の読みや、その漢字を使った熟語などは学べない。それはもっと後のことで、そのベースとなる

  漢字の意味と基本的な書き方をマスターすること

を目的としている。

読み方を知らないなんて!どんな言葉に使われるかもわからないなんて!意味がないと思われる人もいるだろう。何を隠そう、私はそう思ったんで、最初は買わなかった!でも、次の一文でなるほどと思った。

  目標は、日本語を学び始めの中国人と同じスタートラインに立つこと。

確かに、中国人は、漢字を読めなかったとしても、漢字を通してコミュニケーションをとる位のレベルあるし、それは日本語を学び始めるときにすごく役に立つに違いない。なので、スモールステップで考えて、まずそこにたどり着くというわけだ。その段階になれば、少なくとも文章見たときに、何について書かれているか予想することができる。確かに、それをどう発音するか、どんな決まりで漢字と漢字が結びついているのかというのはまた別の段階の学びなのだ。

具体的には、漢字一字一字を「部首(clé)」と「部品(composant)」に分けて考えて、それらのまとまりごとに2136個の常用漢字が整理されている。
最初はこの部品や部首、基本的な漢字を習得するところから始まり、少しずつその組み合わせた漢字を学んでいく構成となっている。それぞれ、漢字と漢字が持つ意味とを結びつけるようなストーリーが展開されている。

例えば、「枠(cadre)」は、木偏のところに整理されていて、「薄い木でできて、それぞれの角は90度」みたいな説明がされている。

「論理的思考が得意な左脳」と「情緒的な思考が得意な右脳」をうまく刺激してとでも言うべき?学習法だなと思った。

意表をつかれたような印象を持ったけれども、よく考えたら、石井式の幼児に対する漢字指導法と共通点があるなと思った。まだ、言葉が未発達の子供たちに、表意文字である漢字を絵として先に植えつけることで、

音なしに漢字を見て意味をとらえていくことができる状態にする

のだから。ただ、ここでは大人の外国語学習者を想定してるので、もっと論理的に説明できる部分(部首の仕組みを捉えさせる)はしてしまって、より早く身に付けられる学習法として位置づけられているんだと思う。

息子の反応

私が読んでいると、息子が横から「何読んでいるの?」と聞いてきた(日本語の本を読んでいるときは聞かないけど、フランス語の本を読んでいると聞いてくる息子(笑))ので、「これさ、漢字の本なんだけど、ちょっと読んでみて。君がどう思うかその感想を知りたい!」と返した。

私がすこぶる驚いたことに、漢字というと、基本的に嫌がる息子が熱心に非常に熱心にこの本を読んでいたこと。しまいには、「あの本どこ?」と探しにまできた!!

  楽しんでいれば、必ず何かを学んでいる

という私の教育信念から言えば、これは、素晴らしい本であることは間違いない。

それで、息子に何がそんなに楽しいのか、漢字を学ぶ本としてどう思うか?聞いてみた。

「ちょっと遠回りしすぎだと思う。だって、こんなにいっぱい読んでもわかるのは、漢字の意味だけじゃん。考え方とかは面白いし、覚える助けにはなると思うけど、一生懸命これをやっても結局読めなかったら、意味ないと思う。」

なんでも、効率よく、ちゃちゃとやりたい息子らしい返答だ。
で、一応、上記のこの本の趣旨「中国人と同じスタートラインに立つ」という話をしたら、「外国人として日本語を学ぶ人になら確かにいいかも」と。

息子の場合、やはり、なんだかんだ日本語の語彙を先に知っていて、それをどう表記するか、その漢字の知識からどう語彙を広げていくかという段階にいるけれど、外国人学習者の場合は、その語彙が全くない段階からスタートするわけだ。母語話者なら、当然「言葉を音声として知る⇨表記法」といくのが自然だけれど、外国人の場合は、その逆をとったって全く不思議ではない。だいたい、私たちが受けてきた英語教育なんて、全くそれと同じである。

これまで継承語として外国で日本語を学ぶ子は、日本で育つ子に比べて、「語彙の少なさ」「漢字を目にする少なさ」を漢字習得には不利というベクトルで話を進めてきたが、逆の方向から見れば、「語彙も多少なりともあり」、「漢字に触れてきた経験も少なからずある」のだと、改めて気付かされた。

教育学部時代に習った

  学習者がすでに持っているレディネスを把握してそれに上乗せして指導

を進めるという発想の大切さを噛み締めた

お勧めの人

というわけで、この本は補習校に通うような継承語学習者には、向かない。遠回りすぎる。
あとは、やはり、論理がまだ理解できない年少者にも向かない。年少者は具体的にイメージできる話でないと難しいが、ここではメタファーも結構使われるので。

でも、

外国語として(あるいはそれに近い形で)日本語を学ぶ中学生以上の学習者

には大いに活用できると思う。
あとは、うちの息子のように、すでに小学校6年生までの漢字をマスターしている学習者にとっても、漢字を覚えるコツ、楽しさを再発見させてくれるので悪くない。

購入方法だけれど、私はフランスのアマゾンで購入したけれど、日本でも著者に直接連絡を取れば5000円ほどで買えるらしいので、興味がある方はどうぞ。

フランス語速読にための裏技

余談だが、最初フランス語で読み進めていたけど、私のフランス語力ではなかなか進まなかった。メタファーが多いからなんだと思う。メタファーって、その文化圏にいる人、同じような思考回路を持つ人にとっては、すごくイメージが湧いてわかりやすいのだけど、それ以外の人にとってはかえって難しい。大学時代、ゼミで教授がメタファーをよく使い、「??」な横で、大学院生や内地留学生の先生方が「なるほど!」と感嘆のため息を漏らしていた頃を思い出す(笑)

それで、途中から、こんな風に翻訳機を使ってみた。本当にドラえもんの世界だなと思った。虫眼鏡のように、本に当てて読み進めるだけで、大体のことはわかる。
この本は、「フランス語圏の人が中国人と同じスタートラインに立つための本」だけど、翻訳機は「非ローマ字圏の人がローマ字圏の人と同じスタートラインに立つための道具」だな。
真面目な私は、なんとなく、ちゃんと原語で読まないと、と思っていたけど、これで概略だけでもざっと読んで、必要なところだけ、原語でしっかり読み込むようにこれからはしようと思った。

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