1ヵ月の間に6校の公立学校を回った。
そのうち5校は学校選択の光の部分、そして最後の1校は陰の部分だったように思う。
シカゴのダウンタウンの南部に位置する超高級住宅地にある公立学校。
オバマ元大統領やモハメドーアリの家があるシカゴ大学にほど近い場所。
学校の周りは、
これ一件の家ですか?
と、聞きたくなるくらいの豪邸と広い街路樹。
しかし、何ブロックか車を走らせると、人気も少なく、歩いている人はみんな黒人で、壊れかけた家屋が並ぶ。
車が故障したらどうしようとドキドキするほどだ。
たまたま日本語補習校で知り合った日本人ママがこの学校にお子さんを通わせていたので、見学できたけど、そうでなかったら、さすがに勇気が出なかった。
高級住宅地の中にポツンとたつこの学校。
本来の学区に住む子供は、ほとんど通わず、みんな私立か学区外の学校に越境通学している。なので、生徒はみな、学区外から来る子供たちばかり。
学校に一歩足を踏み入れて、びっくり。
95%は黒人。先生も半分以上は黒人の方。
友達はこの学区に住んでいるので通わせているが、ぐるっと学校を回った感じでは、彼女のお子さん以外にアジア系の子供を見かけなかった。
彼女は、学校が荒れ、授業がまともに行われていないことを懸念し、ボランティアで自分の子供のクラスに入っていた。
お子さんは小2と小4で、特に上のクラスは学級崩壊状態で、学年の途中で担任の先生が療休を取ってしまう結末になり、代替教員も見つからず、今は校長先生が入っているとのこと。
「この学校は好きなんだけど…」と、残念そうな彼女。
でも、自分の子供の教育が心配で、9月以降は、他校に学区外通学をさせるように手続きを進めているとのこと。
学校環境自体は決して荒れているわけではない。
子供たちの理解を助ける教室掲示
子供自身が自分の学習態度をメタ認知できるしくみ
整理された図書
広い校庭に、菜園
そのほか、
教室、廊下で子供やボランティア、訪問者に声をかける校長先生
廊下で先生同志がすれ違うときの目くばせや声の掛け合いから感じる
教員間のチームワークのよさ
など、数分学校を歩いただけで、先生たちの頑張りが随所に感じられる。
でも、小2の息子さんの理科の授業を見学させてもらって、
彼女の選択は、親としては当然だよな
と思った。
授業始まり時にすでに机に突っ伏すなど、姿勢が保ていない子が25人中5人。
グループの友達と仲たがいをして、席に座らず、柱に向かってぶつぶつ言っている子一人。
そのうち、教室の隅にあるカーペットで寝そべってしまう子一人。
先生は、そんな一人一人を注意をむける余裕はない。
6つのグループに分かれて、地滑りの実験をしていたのだが、
自律して意味が分かって実験してノートをとっているのは3つのグループ
彼女がサポートに入って成り立っている1つのグループ。
あとの二つは、先生に繰り返し注意され、実験の意味が分かっているかはかなり微妙。
授業の終わりは、
に書いた行いが正しかった子に飴を配ることで終了…。
繰り返しになるが、決して学校環境は悪くない。
子供たちの家庭が貧困層とも思えない。
子供たちの服装や小奇麗さから、親が十分手をかけていることもわかる。そもそもよりよい教育環境を求めて、越境通学させようと考えるだけの精神的ゆとり、毎日送り迎えする時間的ゆとり、車で連れてくる金銭的ゆとりがあるのだから。
でも、他の学校にあって、この学校に決定的に足りないものがあった。それは、
親のボランティア
他の学校では、学校の随所で親と思しき人が手伝いに入っていた。
「学校を助ける」というその様子は本当に自然で、
スポーツジムに行く前にちょっと寄りました!
子供を送ってきたついでにちょっと手伝って、これから出勤
といった感じなのだ。
それが、この学校では、私の友達以外にはそういう人を見かけなかった。
そして、彼女も出て行ってしまう…。
帰りがけ、校長先生が彼女に話しかけてきた。
「やっぱり、転校しちゃうの?残念だけど、気持ちはよく理解できるわ。」と。
学校選択制の結果、
学校をポジティブな方向に持っていける人はどんどん大変な学校から流出し、困難校はますます難しい環境に直面する
ことになる。
しかも、シカゴ市の仕組みでは、学校のスコアが下降するにつれて、補助金が減額されたり、最終的には廃校にされたりするとのこと。陰どころか、闇だ。
そんな中でこの学校を選んで教えている先生たちに拝みたい気分だった。
コメントを残す