何度もこのブログで紹介しているが、私は漢字指導にミチムラ式を愛用している。
メディアにも何度も取り上げられているのだけれど、思うようには浸透していかないことを、歯がゆく思っている。
それで、ファシリテーターを務めるマルチリンガル漢字指導法研究会のメンバーの声と、自分自身が使っていて戸惑ったことを整理して、「ミチムラ式ガイドブック」なるものを去年の夏休みにせっせと作った。
そこで掲げた「ミチムラ式のつまずきポイントベスト10」が以下のものだ。
① カードを買ってから手をつけるまでに時間がかかる
② 漢字指導の前提となるカタカナ指導が不十分
③ 部品の名前をまず暗記させようとしてしまう
④ いきなり音訓読みを覚えさせようとしてしまう
⑤ 書き方を唱えていても、実は書けない
⑥ 丸暗記させようとして、子どもをうんざりさせてしまう
⑦ 漢字を細かく分解しすぎてしまう
⑧ すべての要素や細かい例外を授業に盛り込もうとしすぎる
⑨ 漢字一字一字を個別に覚えることに終始してしまう
⑩ 漢字を覚えても使えない
この記事では、この③について詳しく書こうと思う。
部品の名前を覚えるのは、ほどほどに
確かに、ミチムラ式は唱えて覚える漢字学習法なので、そのパーツとなる部品の名前がパッパと出てこないことには、唱えようもない。
なので、最初に部品を覚えてしまえば効率的だ。開発者の道村静江先生も、それを勧めている。
ただ、ほどほどに、というのが私の意見だ。
なぜなら、ここでミチムラ式の導入を踏みとどまったり、挫折してしまったりする人が多いからだ。
書いて覚えてきた親や教師は、公式の部首の名前さえ知らないことが多い。そのため、自信を持って教えられないと思ってしまう。
ましてや、ミチムラ式独自の部品となると、まず自分が覚えることに躊躇してしまう。
(去年、学年ごとに整理された正式な部首・部品の一覧表を漢字クラウド社が出してくれたので、少しハードルは下がったように思う。)
次に、漢字が苦手な子ほど、部品名を覚えるのが難しい。
「にんべん」「さんずい」「こざとへん」といった言葉は意味と結びつかないので、余計に多くのことを覚えさせられるように感じるのである。
また、これまで漢字を書いて覚えてきた子は、何の不便も感じていないことも多いので、部品名を覚えることに抵抗感を示す。
意符としての役割を持つ部首には意味があり、それを理解すれば、後々、似た漢字の使い分けに役立つ。できれば、そこまで押さえたいところなのだが、なかなかそこまでいかない。
初めに部品を覚えるメリットを実感させる仕掛け
今年はミチムラ式カードを導入して3年目になるので、上記のことをよくわかっていた。そこで、これまで以上にこの部分を丁寧に扱った。
まず、道村静江先生が保護者や教師向けの研修で行っていた方法を使わせていただいた。
「鬱」という字を子どもに見せて、こう始める。
「ずいぶん複雑な漢字で、とても覚えられないと思うでしょ? でも、これから学ぶミチムラ式の方法だと、すぐ書けるようになるんだよ!」
「まず、知っている部分を探して!」
そう言うと、子どもたちは「木」「缶」「ミ」「ヒ」などと言う。
そこで、子どもたちの言葉を拾いながら、丁寧に分解していく。
「木と木で? そう、林だったよね。林の間に隠れているのは? おお! 缶を知っている人がいる! 優秀! 知らない人は、さらに分解すると? ノ、ニ、山。簡単だね。
このマーク、知ってる? 米印って言うんだよ。×して間に点を打っていけばいいね。
そして、これは箱みたいだから『うけばこ』という名前がある。その下がヒ。最後はミと言った人がいるけど、ミは向きが違うね。これはノ、ノ、ノです。これで『さんづくり』という名前があります」
と、丁寧に漢字を分解して見せる。
そして、
「さあ、これを3回唱えた後、見ないで書いてもらうからね」
と言いながら、パントマイムのように手を動かし、3回唱えさせる。
「さあ、書いて!」
とノートに書かせると、2クラスの生徒全員が書けて、感嘆の声が上がった。
「みんなはこれまで、書いてたくさんの漢字の部品を覚えてきました。これからの漢字はね、ほとんどがその部品の組み合わせだから、レゴみたいにくっつけていけばいいだけ。だから、書かなくても口で唱えて覚えられるね」
と話す。
子どもたちは、「鬱」という複雑な字を書いたばかりなので、興奮冷めやらぬ様子でしきりにうなずいている。
「ただね、今日出てきた『うけばこ』『さんづくり』といった部品の名前は、覚えないと唱えられないよね? なので、これらは最初に頑張って覚えようね。この表を見て、書けるように練習するのは全体の4分の1。そのあとはそれを組み合わせるだけ。ぐーんと楽になるからね。今日作ったカードのうち、部品のカードを次回までに覚えてきてね」
と話した。
遊び感覚で徐々に導入
その「次回」にテストをしてしまってはつまらないので、「部品ビンゴ」というゲームをする。
ルールは簡単。9マスをざっと書き、それぞれのマスに部品を1個ずつ入れる。順番に子どもたちが部品名を言い、それがあれば消していく。3列消せたら勝ちというゲームだ。
これで遊んでいるうちに、子どもたちは自然に部品の名前と形を覚えていける。
最初はカードを見てもよいことにして、その後は「カードなし」にすれば、少しずつ難易度も上げられる。
ビンゴゲームは、子どもたちは何度でもやりたがるけれど、私はマックス3回と決めている。もうちょっとやりたい、というくらいで留めておき、「家で家族とやってみてね」としておくのがよい。
新出漢字の導入の度に、じんわり浸透
そして、早速、新出漢字にどんどん入っていく。
ここでやってしまいがちな間違いが、ミチムラ式の唱え方を子どもたちに覚えさせようとしてしまうことだ。
ここでは、道村式の唱え方と異なっていてもよいので、子どもたち自身が漢字を分解することに焦点を当てる。
私の授業では、漢字が苦手な子に、まず知っている部品(土、山といった基本漢字やカタカナなど)を見つけてもらう。これなら見つけられるし、復習にもなる。
そこから徐々に、まだ習っていない部品に注目させ、その名前を意識させていく。
そして、唱え方を確認した後、今度は見ないでノートに漢字を1文字、大きく書かせる。
あとは、家でもう一度、唱え方を思い出し、見ないで書けるようにするのが宿題だ。
漢字を書く練習は、5回を目安としているが、もっと早く覚えられたら、少なくてもよいと伝えてある。
漢字だけを繰り返し練習するよりも、熟語探しや短文作りに時間を割くようにも伝えている。
このように、最初の段階で完璧に部品を覚えさせず、じわじわと浸透させていくのが、余計な抵抗感や負担を感じさせずによいと思っている。
部品一覧表掲示の効果
今年は、上記のミチムラ式の部品一覧表が販売されたので、それを教室に掲示しておいた。
特に子どもたちには何も言っていなかったのだけれども、「この部品、何て言うんだっけ?」という場面で、子どもたちが席を立って、そこに行って探すように、いつの間にかなった。
ちょっとしたことだが、覚えさせられるのと、自分で見つけるのとでは、定着度に決定的な差が生まれる。
どこに行けば自分の知りたいことが見つけられるのか、子どもたちが自分で理解できたこと。そして、それを毎日少しずつ実行していることがうれしい。
その姿を大いに励ましつつ、漢字カードに入っていたパンフレットにもこの表が付いているので、「トイレに貼って覚えるのもいいね」と話した。
唱える漢字小テストで慣れる
漢字を10個導入したら、小テストをするというルーティンも組んでいる。
このとき、いきなり書き取りのテストにするのではなく、鉛筆を持たずに「唱える漢字テスト」から始めるようにしている。
2人組になって、ミチムラカードの漢字面を見せて読み方を言わせたり、逆に読み方を読み上げて、漢字の部品を言わせたりするものだ。
これを最初に導入したときは、「面白い!」「前より簡単!」と喜ぶ子もいれば、これまでのやり方と異なるため、抵抗感を示す子もいる。
けれど、3回くらいやると慣れてくる。
教師としては、採点する手間が省け、子どもたちが取り組んでいる様子をじっくり観察できるので、それぞれの定着度がよくわかるというメリットがある。
去年までは、この唱える漢字テストは最初だけ行い、徐々に書き取りテストに変えていった。
でも、今年は年間を通して、書き取りテストとは異なるこのテストも混ぜながらやっていこうかなと思っている。
ミチムラ式ガイドブック一般販売解禁!?
さて、冒頭で紹介した「ミチムラ式ガイドブック」
説明とこの躓きの乗り越えるために私が打ってきた方策をスライド付きで、マルチリンガル漢字指導法研究会のメンバー限定で去年から販売している。
私のドライブに入ったドキュメントとスライド類のシェアという簡単なもの。
メンバーのフィードバックをいただきながら、修正を加えてきたので、そろそろ一般に販売してもいいかなと思っている。
ただ、販売を自動化したり、買ってくださった方のフォローアップの仕組みを作ったりするところまでいかず、足踏み中。
もし、希望があれば、このホームページの問い合わせページから連絡ください。たくさん集まれば、エンジンがかかるかも。